今が旬!キング・オブ・フルーツ「ドリアン」

バンコック駐在員事務所
新宅 令康

 サワディーカップ。ドリアンが「果物の王様」と言われていることをご存知でしょうか。タイ語の発音では「トゥリアン」と呼ばれています。昔のマレー語でトゲを意味する言葉の「duri」が語源で、見た目のトゲが名前の由来となっているようです。

 「果物の王様」といわれる理由は諸説あるようですが、刺々しいビジュアルや庶民が食べることができない王族の果物であったこと、加えて他の果物を圧倒するその高い栄養価に起因するとも言われております。

 そこで今回は今が旬でタイ人の大好物でもある「ドリアン」についてご紹介したいと思います。

 ドリアンの原産地は東南アジアのボルネオ島周辺と言われています。主にタイ、インドネシア、マレーシア等で栽培が盛んですが、生産量が最も多いのはタイです。現在、日本で販売されているドリアンはほとんどがタイ産となっています。果実は、品種によって異なりますが、楕円形もしくは円形で直径15~30センチ、重量1~3キロ、中には5キロを超えるものもあります。大きな刺が付いた殻は分厚く、実の中には大きな種も含まれているため果実全体に占める可食部分の割合は少なくなっています。

 ドリアンの最大の特徴は何といってもガスの臭いに例えられることもある強烈な臭いになります。その臭いの原因は硫黄の臭いがキャラメルのような甘い香りと複雑に絡み合っているためと言われています。

 ドリアンの臭いを象徴する事例として、2019年にオーストラリアでガス臭が発生し、何百人もが避難した後、消防隊が駆け付けたところ、ゴミ箱に捨てられていたドリアンが発見されたというコントのようなニュースまでありました。タイでもその強烈な臭いに起因し、公共交通機関やホテルではドリアンの持ち込みは禁止となっています。
 尚、最近はタイ国内でもほとんど臭いのない品種も開発されていますが、生産量が少ないためほとんど流通していないようです。

 何かと臭いの話題ばかりが多いドリアンですが、果肉の肉質はねっとりして、味わいは濃厚で非常に甘く、スイーツ店で販売されている上品なカスタードクリームのようです。パティシエが作る究極のスイーツに例えられることもあります。筆者も何度か食べているうちに、臭いは全く気にならなくなり、やみつきになってしまいました。現在、筆者にとってドリアンは比類なき最高の贅沢スイーツとなっています。

また、ドリアンは栄養価も抜群です。果肉は水分が少なく、ビタミンB1とミネラルは果物全体の中でもトップクラスの含有量です。

 注意点として、タイでは「ドリアンとアルコールを同時に摂取すると死亡する可能性がある」という言い伝えがあります。高脂肪、高炭水化物であるドリアンとアルコールが体内で一緒になると、高血糖値と脱水症状を引き起こす可能性があるそうです。真意は定かではないですが、ドリアンを食べる際はアルコールは控えた方が賢明かもしれません。