シンガポール版
「フィールド・オブ・ドリームス」
HIROGIN GLOBAL
CONSULTING PTE.LTD.
大西 弘城
2026年3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、野球人気が世界中に浸透していることを改めて実感させる大会となりました。日本代表は惜しくもベネズエラに敗れ、連覇はなりませんでしたが、 イタリアがアメリカを破って準決勝に進出するなど、これまで「野球後進国」とされてきた国々の躍進が際立ちました。大会を重ねるごとに競技レベルが底上げされ、野球が着実に世界へと広がっていることを強く感じます。
ここシンガポールにも野球のナショナルチームがあることは、あまり知られていないかもしれません。サッカーやバスケットボールに比べて野球の認知度は高くなく、競技人口も限られています。日本や台湾のようなプロリーグもありません。 代表選手たちは有志で集まっており、仕事や学業を終えた後、グラウンドに足を運んで練習に励んでいます。近隣諸国での大会に参加する際の遠征費用も自己負担とのこと。これまでWBC予選への出場経験はまだありませんが、 2024年の東アジアカップではフィリピン、香港、タイに次ぐ4位に入るなど、着実に成果を上げています。

シンガポール野球代表チームのメンバー
(カープポップストア店内にて)
ある平日の夜、ナショナルチームが練習しているグラウンドを訪れました。そこはソフトボール用に設計されているため、硬式野球をプレーするには十分な広さがありません。ボールがネットを越えて民家に当たる恐れがあるため、 フリーバッティングなどの実戦練習はできず、ノック中心の練習が続きます。フリーバッティングは小さなゲージの中で行うため、打球の行方を追うこともできません。用具を頻繁に買い替える余裕がないため、練習ボールは土で茶色くなり、 暗い照明の中で守備をするのも一苦労です。それでも選手たちは熱心に、そして本当に楽しそうに、練習に取り組んでいます。そこにあるのは、技術や環境を超えた「野球が好きだ」という純粋な気持ちです。

練習グランド

外野ノック練習

内野守備練習

ゲージ内でのバッティング練習①

ゲージ内でのバッティング練習②
筆者自身も野球が大好きな少年でした。カープの選手になることだけを夢見て、友達と近所の広場で毎日のように暗くなるまでボールを追いかけていました。夢は叶わず現在は銀行員として働いていますが、 彼らのひたむきな姿を見て、野球を始めたばかりの頃の純粋な気持ちを思い出しました。
現在、シンガポールでは野球専用スタジアムの建設構想が進められています。もしこれが実現すれば、野球を取り巻く環境は大きく変わることでしょう。
“If you build it, he will come.”(それを作れば、彼が来る)※
いつの日か、WBCの舞台で日本とシンガポールが対戦する――そんな光景も、決して夢物語ではないのかもしれません。
※映画『フィールド・オブ・ドリームス』の有名なセリフ