新たなビジネスチャンス?
タイの自動販売機

バンコック駐在員事務所
吉田 恭脩

 私が初めてタイを訪れたのは2015年の12月なのですが、当時の記憶で今でも残っているのは、日本には数多ある自動販売機が皆無に等しかったということです。

 日系企業の工場内で、日本円表記が残っている、日本の中古自動販売機を改造したものをかろうじて見かけるほどでしたが、治安の面から生じる盗難リスクや、 ひとたびスコールが降れば膝下まで冠水するために生じる漏電リスク、何より、世界でも有数の大渋滞が恒常的に生じるバンコクでは路肩に停車しての補充作業が不可といった問題や、 タイの人件費の安さを考慮すれば、自然なことだったのかもしれません。

 しかしながら、4年半ぶりに訪れたタイでは、屋根のあるところであれば、至る所に多種多様な自動販売機が設置されているではありませんか。

 その主な理由は、コロナ禍での、飲食店やコンビニエンスストアの時短営業、非接触・非対面の浸透であることは言うまでもないでしょう。 また、日本とは異なり、タイでは強制力のある夜間外出禁止令が出ていたことが、更に拍車を掛けることとなったようです。

 そこで今回は、タイの自動販売機についてご紹介していきたいと思います。

TAO BINの自動販売機

 現在、タイで最も目にする自動販売機は、「TAO BIN」の飲料自動販売機です。 なんとこの自動販売機、1台でコーヒーから紅茶、ミルク、フルーツジュース、スムージー、炭酸飲料、プロテインシェイクまで、 最大200種類超のドリンクに対応しており、好みに応じた細かい調整も可能です。

 実際、TAO BINの2022年度の売上高は、前年比406%増の15.1億バーツ(約63億円)、 自動販売機の設置台数も423%増の4,942台と大幅な伸びを記録しており、今年度もその勢いはとどまるところを知りません。

TAO BINの自動販売機

 また、セブンイレブンの自動販売機もコンドミニアムを中心に設置されています。 こちらの自動販売機では飲料は勿論のこと、弁当から惣菜、スナック菓子やデザートも販売されています。

 補充作業は、最寄りのセブンイレブンの店舗から、従業員が自転車でやって来ることで、大渋滞とも無縁のソリューションを実現していました。

セブンイレブンの自動販売機

補充作業の様子

 高架鉄道の駅では「TURTLE」という新興コンビニエンスストアが自動販売機を設置していますが、こちらの自動販売機では、雨具や着替用の衣類等が売られているのは雨季のあるタイならではの発想です。

TURTLEの自動販売機

 その他、その場でオレンジを絞ってジュースにしてくれる自動販売機や、 プロテインシェイク専用自動販売機、抗原検査キットの自動販売機(最近でこそ見かけることはなくなりましたが、コロナ禍の名残があった春先まではよく見かけました)といった、ユニークなものも登場しています。

オレンジジュースの自動販売機

プロテインシェイクの自動販売機

抗原検査キットの自動販売機

日本式の自動販売機

 コロナ禍を機に定着した自動販売機が、今後どういった進化を遂げていくのか注目していきたいと思います。みなさまもタイへお越しの際には、日本とは一味違った自動販売機を体験してみてはいかがでしょうか。

写真は全て筆者撮影

(2023年11月)