日本とは違う?タイの就活事情
バンコック駐在員事務所
吉田 恭脩
先日、日本の大学生の方とお話をする機会があり、就職活動の話題になりました。日本では、ある時期を境に就職活動が一斉にスタートする「新卒一括採用」が一般的ですが、これは世界的には特殊なケースであるということを、しばしば耳にします。
では、タイの就活事情はどうなっているのだろうかと疑問に思い、調べてみることにしました。
日本においては、大学生では3回生頃から4回生の夏にかけて就職活動を行い、インターンシップや企業説明会への参加、エントリーシートの提出・試験・面接等を通じて内定を得るのが一般的ですが、タイの企業は通年で新卒採用を行っているため、学生は自身のペースで卒業後に本格的な就職活動を開始することが一般的です。そのため、日本のような入社式もなければ、一斉での新入社員研修もありません。
余談ですが、タイの国立大学の卒業式には王族関係者がご参列され、卒業生一人ひとりに直接、卒業証書を授与されるという慣習があるため、スケジュール上の都合により、卒業式は実際に卒業してから数ヵ月後に開催されることが通常です。
タイ最難関とされる「チュラロンコン大学」
また選考において、日本では個人の努力や学歴が重視される傾向にありますが、タイでは縁故者の紹介や推薦が強い影響力を持っています。
さらに、タイでは学生がアルバイトをすることは一般的でないこともあって、就業体験を持つ学生が少ないことから、日本以上にインターンシップの経験が重視される傾向にあります。
このインターンシップという点においては、タイ最大の財閥であるCPグループの傘下で、セブンイレブンを運営しているCP ALLが経営する大学、「パンヤピワット経営大学」が注目を集めており、弊所でも実際にお話を伺ってきました。
「パンヤピワット経営大学」
パンヤピワット経営大学では、卒業後に即戦力として働くための教育を徹底しており、1回生からインターンシップがカリキュラムに組み込まれています。
もともとはCP ALLがセブンイレブンの人材を育成するために設立されましたが、現在では、他の企業もスポンサーとなり、卒業後に一定期間働いてもらう条件で奨学金を提供しています。企業側にとっては、学生はインターンシップを通じて仕事を覚えるため、入社後に一から教育を行う必要がなく、学生側にとっても、仕事の内容や雰囲気を入社前に実際に経験できるため、ミスマッチが少ないというメリットは大きいようです。
そして、就職先については、Work Venture社が毎年公表している「若者が就職したい企業ランキング TOP50」によると、外資系企業やタイの大手財閥企業が特に人気を集めています。この点においては、日本同様、給与・福利厚生・グローバルなキャリア形成・雇用の安定性といった点がキーワードとなっているようです。
加えて、旅行会社等も外国語スキルを活かして活躍する機会が豊富なため、観光業が主要産業であるタイでは人気の就職先となっています。
出所:Work Venture社「TOP 50 COMPANIES IN THAILAND 2024」
タイで用いられている通年採用は欧米でも主流であり、時代の変化とともに、日本の就活事情が大きく様変わりするのもそう遠い将来ではないのかもしれません。
写真はすべて筆者撮影
(2024年7月)