渋滞回避の強い味方!
バンコクの鉄道網
バンコック駐在員事務所
吉田 恭脩
先日、バンコク郊外へ出掛ける用事がありルートを調べていたところ、いつの間にか新たな鉄道の路線が開通しており、実際に利用してみると渋滞に巻き込まれることなく到着できたということがありました。
バンコクの鉄道は、具体的な時刻表がない、主要駅では利用乗客数に対して駅のキャパシティが足りていない、券売機のタッチパネルの感度が悪い、自動改札ゲートの開閉タイミングが一定でなく時折挟まれる、異なる運営会社間ではICカードに互換性がない等、日本人からすると改善して欲しい点が多々ありますが、世界有数の渋滞の下では、補って余りあるメリットもありますので、今回はバンコクの鉄道網についてご紹介させていただきたいと思います。
BTSスクンビット線 アソーク駅の改札口
バンコク路線図(出所:Bangkok Mass Transit System)
バンコクの鉄道といってまず思い浮かぶのはBTS(Bangkok Mass Transit System)と呼ばれる高架鉄道ではないでしょうか。1999年12月にライトグリーンライン(スクンビット線)とダークグリーンライン(シーロム線)が開業し、直下の道路を走る路線バスより運賃が高いこともあって、当初は乗客数が伸び悩んでおりましたが、その後、路線バスの減便影響や割引回数券の導入等によって乗客を獲得していきました。
バンコクの主要な商業施設や歴史的地区、ビジネス街および住宅街を結んでおり(弊所もスクンビット線プルンチット駅直結のオフィスビルに入居しています)、最も利用頻度が高い路線となります。
そのルートの特性上、車両は全面広告ラッピングされており、異なる広告仕様の車両が次々に通過していく様子を眺める度、タイのプロモーションに対する力の入れようには感心させられます。
現在も延伸を続けており、いつの間にか終着駅名が変わり、乗り間違えたことがあるのは私だけではないはずです。
BTSスクンビット線
MRTブルーライン スクンビット駅出入口
また、2004年7月に開業したMRT(Mass Rapid Transit)ブルーラインや、2010年8月に開業した、スワンナプーム国際空港とバンコクの中心部を結ぶエアポート・レール・リンクもよく利用されている路線です。MRTブルーラインの一部は地下鉄となっていることから、洪水発生時における濁流の地下への流入防止のため、地上の出入口に故意に上り階段が設けられているのは雨季の豪雨があるタイならではの光景ではないでしょうか。
2016年8月には、MRTパープルラインも開業し、これらの路線はバンコクの交通網を補完する重要な役割を果たしています。
MRTブルーライン スクンビット駅出入口
近年では、2021年1月にBTSゴールドライン、2023年7月にMRTイエローライン、本年1月にはMRTピンクラインと、新たな路線が次々に開業しています。これら3つの路線はモノレール仕様で、なんと全自動無人運転車両が採用されています。この車両は中国製であり、こういったところでも昨今の中国の影響力の強さを垣間見ることができます。
バンコクでは発展している地域に後付けで鉄道ができることも多いためか、日本では考えられないような鋭いカーブを走る路線もあり、乗車していると恐怖を感じることもありますが、その辺りはマイペンライでしょうか。
BTSゴールドラインは主として大型商業施設アイコンサイアムへアクセスするための路線ですが、車両にはゴム製タイヤが使用されているのも珍しいポイントです。
BTSゴールドライン
タイ国有鉄道も新たな路線として、2021年11月にはSRT(State Railway of Thailand)ライトレッドラインおよびダークレッドラインを開業しています。ダークレッドラインの開業により、LCCの玄関口となるドンムアン国際空港へ鉄道によるアクセスが可能となりました。
なお、これら2つの路線では日本の日立製作所が製造した車両が使用されています。
バンコクの鉄道網は、さらなる延伸や新規路線の開業も計画されており、将来的にさらに便利になることが期待されています。バンコクへお越しの際には、渋滞回避の手段として、鉄道の活用もご検討ください。
写真はすべて筆者撮影
(2024年11月)