「バターベア」に学ぶ
アジアにおけるSNSの爆発力

バンコック駐在員事務所
吉田 恭脩

 2024年にタイで最も話題となったものといえば、コビトカバの赤ちゃん「ムーデン」と、「バターベア」ではないでしょうか。「ムーデン」についてはその愛らしい姿が日本のメディアでも多く取り上げられていましたので、耳にしたことのある方もいらっしゃるかと思いますが、「バターベア」はご存知でしょうか?

 「バターベア」とは、タイのスイーツ店「Butterbear」の熊のマスコットキャラクターで、タイ語では「ノーン・ヌーイ(バターちゃん)」の愛称で呼ばれています。

「Butterbear」店舗

「Butterbear」店舗

 「Butterbear」はもともとオンライン販売専門店でしたが、2023年12月に開業したショッピングモール「EMSPHERE」に、初めて実店舗を開業しました。店舗ではドーナツやパン、クッキー等のスイーツはもちろん、ぬいぐるみやTシャツ等の「バターベア」グッズも販売されており、設置された機械でプリクラ撮影を楽しむことも可能です。オープン直後から連日大行列ができるほどの人気店となり、私もその光景を鮮明に覚えています。

 その後、バンコク中心部の高級ショッピングモール「Siam Paragon」に2号店もオープンしていますが、今のところ、タイ国外には進出していません。

「Butterbear」店舗

「Butterbear」店舗

 では、バンコクに数多くあるスイーツ店の中で、なぜ「Butterbear」がこれほどの人気を得ているのでしょうか。その理由は、マスコットキャラクター「バターベア」の可愛らしい見た目と、キレのあるダンスにあります。

 SNSで広く取り上げられたことをきっかけに、タイ国内にとどまらず、中国等のアジア圏を中心に一気にファンが広がりました。2025年3月時点で、動画共有サイトでの視聴回数は最も多い動画で1,900万回を超えています。

 タイ国政府観光庁も中国人観光客の誘致キャンペーンに「バターベア」を起用し、観光振興にも一役買っています。

「セブンイレブン」とのコラボレーション

「セブンイレブン」とのコラボレーション

 その人気は凄まじく、ショッピングモールにできた人だかりは有名人のイベントによるものかと思いきや、「バターベア(着ぐるみ)」目的だったことには驚きました。

「ZARA」とのコラボレーション

「ZARA」とのコラボレーション

一過性のものだろうと特段気に留めておりませんでしたが、その人気は衰えることなく、最近では他の有名企業とのコラボレーションも積極的に展開しています。いまや「バターベア」を目にしない日はないといっても過言ではありません。

「セブンイレブン」とのコラボレーション
「セブンイレブン」とのコラボレーション
「ZARA」とのコラボレーション
「ZARA」とのコラボレーション
「CASETiFY」とのコラボレーション
「CASETiFY」とのコラボレーション

「CASETiFY」とのコラボレーション

「CASETiFY」とのコラボレーション

 「Butterbear」の急速な成功には、マスコットキャラクターによる販促や、アジアにおけるSNSの爆発力が大きく寄与しており、ここに日本の企業がアジア展開を検討する上でのヒントがあるかもしれません。

 タイへお越しの際には、今やタイの国民的キャラクターとなった「バターベア」グッズをお土産に選んでみてはいかがでしょうか。

人気お土産店「NaRaYa」とのコラボレーション
人気お土産店「NaRaYa」とのコラボレーション
百貨店内のポップアップストア
百貨店内のポップアップストア

写真はすべて筆者撮影

(2025年3月)