ミャンマー大地震を経験して
バンコック駐在員事務所
吉田 恭脩
2025年3月28日午後、ミャンマー中部マンダレー近郊を震源とするマグニチュード7.7の大地震が発生しました。
被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
震源から1,000km以上離れたバンコクにおいても、長周期地震動がバンコク周辺の軟弱な地盤で増幅され、高層ビルと共振したことから被害が発生しました。 高層ビルが倒壊する様子や、ビルの高層階にあるプールの水が地上に滝のように落ちる様子が日本のメディアでも報道されておりましたので、目にされた方も多いのではないかと思います。
地震発生当時、私はバンコクのオフィスビル16階にある弊所にて勤務しておりました。最初は壁がきしむ音がし始め、隣の入居者の作業音かと思い、気にも留めておりませんでした。程なくして、妙にめまいがするなと思っていたところに、同僚の「地震です!」という声で、初めて自分の置かれている状況を認識しました。
その後、これまで私自身が経験したことのない揺れとなり、天井・壁からの異音も増し、窓越しに見える付近の高層ビルが左右に揺れているのが目視できるほどとなりました。
弊所入居ビル 被災状況①
地震がないと言われるタイですが、私自身、バンコクで地震に遭ったのは2度目で、1度目は今から約9年前、当時勤務していたオフィスビルの24階にいた時でした。
今回と同じく、ミャンマーを震源とする地震で、さほど大きな地震でないにもかかわらず揺れは相当なものであったことから、もしタイに大地震が来ると、日本とは建築基準の異なるバンコクの高層ビルや交通機関の橋梁は、軒並み甚大な被害を受けるだろうなと感じたことを覚えており、これほどまでの揺れが生じると、建物の倒壊が頭をよぎり、命の危険を感じました。
地震大国である日本出身の私は現地スタッフとともに、日本の地震対応マニュアルに従い、揺れが収まるまで待機しておりましたが、同じフロアで勤務する他社のタイ人たちは一目散にビルの外へ避難し、非常ドアの警告音がフロア中に鳴り響いていました。後日、彼らに聞いた話によると、「タイの建物は信用できない」ということでして、日本基準による私の判断が当地において正しかったのかは今も確信が持てないままです。
弊所入居ビル 被災状況②
周囲のタイ人たちに遅れてビルの外に避難してみると、地上はすでに騒然としており、弊所入居ビルも点検のため、すぐに立入禁止となりました。いったん近くの公園まで避難し、立入禁止解除を待ちましたが、そこも多くの人で溢れかえっていました。
約2時間後、1社1名限定で30分のみ、非常階段使用での立入が許可されましたが、17時以降は再度立入禁止となり、高架鉄道や地下鉄といった公共交通機関も運休となったため、多くの帰宅困難者が生じ、コンビニ等の小売店も多くが臨時休業となる事態となりました。

公園に避難する人々

帰宅困難者たち
地震発生から3か月が経過し、バンコクでは平穏を取り戻しつつありますが、私の住むマンションのエレベーターはいまだ半分が稼働していない等、その爪痕は随所に垣間見えます。
被災地の一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げるとともに、ペートンタン首相は各省庁に、日本を含む地震大国の防災対策を研究することを求めており、自然災害の多い日本がこれまでの経験で培ってきた安全・安心を実現する技術等が世界の防災に貢献できればと願っております。
写真はすべて筆者撮影
(2025年7月)