世界一危険?線路上の傘たたみ市場「メークロン市場」

バンコック駐在員事務所
新宅 令康

 サワディーカップ。世界有数の観光地であるタイには定番であるバンコク王宮周辺の3大寺院や世界遺産のアユタヤなど見どころが満載ですが、定番観光地以外も訪れてみたいと思われる方に是非おすすめしたいのが傘たたみ市場として有名な「メークロン市場」です。

 「メークロン市場」はバンコクから南西に約70㎞のサムットソンクラーム県にある地元民向けの市場です。その特徴は何と言っても現役で使用中の鉄道の線路両脇に商店が並んでおり、買い物客は線路上を歩きながら、その場でお気に入りの商品を購入できることです。

 一番の問題点は現役で使用中の鉄道の線路であるため、当然電車が通過(4往復=1日8回通過)することです。事前に電車の通過を知らせるアナウンスが流れると、各商店の商人は、線路にはみ出た日よけ傘を一斉にたたみ、棚を最低限両脇に引いて列車の通過を待ちます。そして電車が通過した後には、何事もなかったかのように、傘を開いて、棚を戻し営業を再開します。この作業は10分程度でとても手際よく行われます。
 筆者も日本では絶対にあり得ない光景に度肝を抜かれました。他の観光客もなんとも言えない光景に感嘆の声をあげていたのが印象的でした。

 それにしても、何故こんな危険な場所で商売を行っているのでしょうか。この駅は元々は私鉄駅だったそうですが、第二次世界大戦後にタイ鉄道が国営化されたのを契機に、線路脇の国有地に貧困層が無許可で家を建て、商売を始めるようになりました。複雑な事情もあり、この国有地に無許可で住む人たちを強制撤去させるのは国としても簡単ではないようです。

 現在では約250店が線路脇に集積し、結果的にタイ有数の観光地になったのですから、摩訶不思議としか言いようがありません。インドやフィリピンでは、国有地に無許可で住む人たちがスラム街を形成し、むしろ観光客が近づかないエリアになっていることを考えると対照的です。

 タイにお越しの際は、日本では絶対に見ることができない傘たたみ市場はいかがでしょうか。視覚的なインパクトも強くインスタ映えも間違いありません。補足ですが、メークロン市場では警備員の方々が細心の注意を払って交通整理をしており、これまで人身事故は一度も起きていないそうです。