ベトナムの新型コロナウイルス
ハノイ駐在員事務所
中山 紘
ご存知の方も多いと思いますが、ベトナムは新型コロナウイルスの累計感染者が2020年4月末日時点で270名、死亡者は無しと、アセアンの周辺諸国に比べ感染の抑制に成功しています。その背景には拡大防止に向けた様々な対策があるのですが、今回はその一部をご紹介します。
まず、最も効果的だと言われているのが、徹底した隔離の実施です。感染者や濃厚接触者の隔離はもちろん、感染者がプレーしたゴルフ場に当日居合わせた人や、濃厚接触者と同じエレベーターを利用した人等についても、警察が市中の防犯カメラ等で人物を特定し、隔離の対象としています。私のような駐在員を含む現地に滞在する外国人に対しては、警察がオフィスや自宅を訪問しパスポートチェックを行い、海外渡航歴の詳細な確認等を実施しています。あわせて、迅速に国内外のフライトを制限し、人の往来をストップさせました。


『閑散としたハノイのノイバイ空港国際線ターミナルの写真(2020年4月1日撮影)』
また、一層強力な隔離措置として、ホーチミンでは感染者の出入りがあった建物を一棟ごと隔離対象としました。ハノイでは人口1万人超の村を隔離し、村の出入口にはバリケードと検疫場を設け、数週間に渡って人の往来を厳しく制限しました。私の知人も複数名が自宅隔離の対象となる等、一時感染の疑い有りとして隔離された人は7万人を超えたとの報道もあります。
隔離の他に感染防止に有効なのが、各種対策の違反者に対する罰則です。公共の場でマスクを着用しなかった者は最大で約1千5百円、自分や他人の新型コロナウイルスの感染を隠した者は約1万円、隔離施設からの脱走や隔離措置を拒否した者は約5万円、インターネットにデマ情報を投稿した者は約7万5千円等、細かくルールをつくり罰金を定め、人々のコロナ対策に対する意識の定着を図っています。
このような対策が奏功している理由として、まだ十分とは言えないベトナム国内の医療水準から、一人一人が相当の危機感を持って対応したこと以上に、家族や共に暮らす人を思いやるベトナムの国民性が大きく関係していると思います。ベトナムは4月23日から各種規制の緩和を開始していますが、このまま死者数0で収束し、この素晴らしい国民性が評価され国内外の投資が回復した後には、これまで以上にASEAN経済を牽引する存在となることを確信しています。
(2020年4月30日現在)