ベトナムのごみ処理問題

ハノイ駐在員事務所
中山 紘

 昨年の秋、ハノイ市内の至る所が放置されたごみで溢れかえっていました。場所によっては、歩道を塞ぎ交通渋滞の原因になったり悪臭が発生したりと、現地のニュースや新聞では大きく採り上げられました。経済の急成長と消費の増加に比例しごみが増えており、普段から「街の中にごみが多いな」と感じていましたが、そのときはいつもと様子が違い、日に日にごみ置き場のごみ山が大きくなっていました。

ハノイ市内の車道に溜まったごみ(筆者撮影)

 この問題は、ハノイ市内最大の廃棄物処理施設であるナムソンごみ処理場で発生した、周辺住民によるごみ収集車に対する進入妨害が原因でした。ハノイ市内で発生する1日6,500トンの廃棄物のうち約5,000トンを同施設で処理することから、収集されなかった多くのごみが数日間街中に放置されたようです。

 なお、妨害発生の理由は、同処理場での不適切なごみ処理による悪臭の問題や、土地収用に係る政府当局と住民間のトラブルで、1999年の竣工以降同様の問題は何度も発生しています。またホーチミン市等でも同じような事例が確認されており、都市部での廃棄物処理のキャパシティー不足、処理の効率化や高レベル化は「待ったなしの重要課題」となっています。

 このような状況を改善するため、2021年11月に岸田内閣総理大臣とチン首相の立会いの下、「日本国環境大臣及びベトナム天然資源環境大臣間の2050年までのカーボンニュートラルに向けた気候変動に関する共同協力計画」が合意され、脱炭素事業の形成や海洋プラスチックごみ対策、大気汚染対策に加え、廃棄物管理に関しても両国が協力し、継続的に議論を行うことが決定されました。

 日本をはじめ各国政府の協力もあり、環境に配慮した適切なごみ処理に向けた法制度等は整いつつありますが、ベトナム国民の意識向上は不可欠で、現時点では多くのエリアで家庭ごみの分別もままならない状態です。SDGsへの取り組みが強化され、廃棄物処理の高レベル化が求められる中、日本の官民が持つ高い技術とノウハウの提供が現在ベトナムで求められています。