ハノイのお好み焼き屋から学ぶ海外進出

ハノイ駐在員事務所
中山 紘

 海外在住の広島県民が、時折無性に食べたくなるものの1つがお好み焼きです。 とても有り難いことにハノイにはお好み焼き屋が複数あり、日本に帰らずとも気軽に故郷の味を思い出すことができます。 そこで今回はハノイにある3つのお好み焼き屋について、それぞれ特長と戦略を考察しつつご紹介します。

1店目は、バーディン区にある「HANA」です。ベトナム人向けのレストランやカフェが並ぶ通りにお店があります。 本場広島と同様にお客さんの目の前の鉄板で作るスタイルはハノイでは珍しく、ベトナム人の来店客に好評です。 メニューはお好み焼きのほか、マグロやサーモンなどの刺身もあります。ベトナムでは「日本食=刺身、寿司」のイメージが強く、 こちらに限らず焼肉屋でも刺身を置いているお店があります。

私がお邪魔したときも、ベトナム人の2人組がお昼から刺身の盛り合わせを食べていました。刺身や寿司を食べた後、締めにお好み焼き1枚を皆でシェアするお客さんも多いようです。
 なお、味の方はソースと野菜のバランスが良くとても美味しいです。また焼いている最中の流れるようなヘラさばきも本場さながらでした。

鉄板の仕様も本場広島さながら

当店定番の豚たまそば、140,000ドン。約800円

 続いて2店目は、ハノイの日本人街リンランにある「明星オタフク」です。 日本人向けの飲食店が集積し入れ替わりも多いエリアで長年続く、老舗のお好み焼き屋です。 来店客の大半が日本人とのことで、壁一面に漫画が並ぶ店内の様子は、広島県民が慣れ親しんだ「地元のお好み焼き屋」を思い出させます。 夜は居酒屋メニューが豊富で、お酒を飲んだ後にお好み焼きを食べることもできます。
 あらかじめ麺にもソースが絡めてあり濃厚で、満足感&満腹感の高いお好み焼きです。また、皿と箸ではなく、鉄板とヘラで提供されるスタイルは本場と同様で食欲をそそります。

日本人街の入口付近にある当店

肉玉そばねぎ、150,000ドン。約850円

 最後の3店目は、市内のショッピングモール「ビンコムメトロポリス」に2022年10月にオープンした「ぼてぢゅう」です。 日本でも多店舗展開する同社のハノイ第1号店で、開店当初から昼夜賑わっています。モール内ということもあり、 私がお邪魔したランチタイムは家族連れや友達同士で訪れているベトナム人が大半でした。なお、こちらも1店目の「HANA」と同様刺身を提供しています。 刺身以外にもステーキやかつ丼、うな重などメニューは豊富で、「大人数で食事をシェアするベトナムの食文化」にマッチした店づくりで人気を集めています。

若いベトナム人で賑わうランチタイム

豚玉、169,000ドン。約950円。
奥は刺身のメニュー表

 以上、ターゲットとする顧客や立地の特性に応じてメニューや店づくりを工夫するなど、3店それぞれに成功の秘訣がありました。 ハノイのお好み焼き市場が今後も一層拡大していくことを願っています。