常夏の国での
“決して熱くない”サッカー応援
シンガポール駐在員事務所
野口 裕子
皆さま初めまして。2013年シンガポール駐在員事務所設立当初より、現地スタッフとして勤務しております野口です。シンガポール人の夫との結婚を機に来星、政府系金融機関にて13年弱勤務ののち現職に就き、気が付けば8年が経ちました。どうぞ宜しくお願い致します。
応援フォームも2チーム分
さて、この原稿を書いている今、世界各国では2022年W杯カタール大会最終予選に向け熱い戦いが繰り広げられています。当地でもW杯への関心は高いのですが、自国サッカーに対する関心は低く、FIFAランキングは現時点159位。かねてからW杯出場を夢見て政府がプロジェクトを掲げるも、一向に辿り着く気配はありません。元来サッカー観戦好きの私も現地サッカーには殆ど興味がありませんでした。
しかしながら、近年、「応援したい」という気持ちが湧いてきました。理由は「日本とのつながり」です。当地のプロリーグであるシンガポールプレミアリーグ(SPL)には、「アルビレックス新潟」が2004年より参戦し、過去4回優勝しています。エプソン・シンガポール社は、「ゲイラン・インターナショナルFC」とスポンサー契約を締結し、同日本法人がスポンサードする「松本山雅FC」とも選手やスタッフの相互派遣を行うなど、両国間の国際交流に貢献。2019年には吉田達磨監督がシンガポール代表監督に就任し、采配が注目されています。また現地クラブに所属する日本人選手も増加しており、現在では5クラブで7名が活躍中です。
餡かけヌードル「ローミー」
こうして常夏のシンガポールでの“決して熱くない”サッカー観戦が始まりました。活動のメインは、テレビ中継で勝利を願うこと。そして、気が向いたらスタジアムで生観戦、たまにグッズ購入と決して熱心とは言えません。そもそもSPLでは「the shared stadium initiative」という施策により、2つのクラブチームが1つのスタジアムを共有(注)しているため、ホームチームが2つ存在します。2チームを応援できて楽しいのですが、「両チームともホーム」での対戦の際は困ってしまいますので、その時に調子のよいチームを応援しています。
ホームスタジアムの収容人数は5千人程度と日本と比べると少なく、チケットは大人8ドル(約650円)、小人5ドル(約400円)と割安です。しかし、チケットが売り切れることはまずありません。ふと「観戦に行こう」と家を出れば20分で到着します。仮にチケットが買えなくても心配ご無用。スタンドの正面に位置する公立図書館(入場無料)には、「どうぞご覧ください」と言わんばかりにピッチを一望できる大きなガラス窓があり、ご丁寧に観戦用の椅子まで置いてあります。スタジアムに入場して盛り上がるもよし、クーラーの効いた図書館で声を潜めて観戦するもまたよしです。スタンドでは熱狂的なサポーター、サッカーくじに没頭するおじいさん、アカデミーチームの子供達など、各々が自由なスタイルで観戦を楽しんでいます。私は試合終了後に隣接するホーカー(フードコート)で、「ローミー」という餡かけヌードルを食べて帰るのが定番スタイルです。
残念ながら現在は新型コロナ対策のため、スタジアム観戦が中断されています。もはや私の生活の一部となったサッカー観戦。早くまたふらっとスタジアムに寄れる日が来ることを切に願っています。そして、いつの日かW杯でシンガポール代表チームが日本と対戦することを夢見て、これからも応援を続けていきたいと思います。
(注)各スタジアムにおけるホームゲーム数を倍にすることで、スタジアムの稼働率を上げ、映像配信システム等のインフラ投資を集中的に行うことを目的とする