入国制限の大幅緩和について
シンガポール駐在員事務所
大西 弘城
シンガポール政府は、4月1日から新型コロナウイルスに伴う入国制限を大幅に緩和しました。各国でオミクロン株の感染が落ち着いたと判断したためで、新型コロナのワクチン接種を完了していることを条件に、全ての国・地域からの入国を認めています。リー・シェンロン首相は3月24日に行った国民向けの演説で「ビジネスと国際航空のハブとしてのシンガポールの地位を取り戻す」と制限緩和の意義を語りました。これによって、日本からの隔離なしの短期渡航も可能となり、両国間のビジネスや観光での往来が活発になることが期待されています。
また、入国制限緩和に先立ち、3月29日から国内の行動規制も大幅に緩和しました。屋外でのマスク着用義務を約2年ぶりに撤廃したほか、グループ活動や出社の人数制限、飲食店での酒類提供に関する規定などを緩和しました。グループ活動や店内飲食の人数制限は現行の5人から10人に拡大し、22時30分までであった酒類提供については時間制限を撤廃しました。
実はこの「酒類提供22時30分迄ルール」は、現地で生活する人々の間では、意外にも好意的に受け止められていました。特についつい飲み過ぎてしまう習性を持つ日本人駐在員(筆者を含む)からの支持率は高く、「体と財布に優しい政策」として恒久化すべきとの声も多く聞かれました。しかし、解禁初日に居酒屋を覗いてみると、22時30分を過ぎてもお酒を楽しむ多くの人々の姿。時間を気にせずにゆっくりとお酒を楽しむことができるのは実に2年ぶりのことです。飲食店にも活気が戻り、まるでコロナ前に戻ったかのような錯覚を覚えました。
オミクロン株の感染がピークを越え、新型コロナと共生する社会へと移行するシンガポール。コロナ禍によって人々の価値観や行動様式は大きく変わりました。その一方で「みんなとワイワイ騒ぎたい」「美味しいものを食べたい」「遠くへ移動したい」といった根源的な欲望は変わらないどころか、むしろ深まったのではないでしょうか。これから迎えるであろう「新たな日常」がコロナ前より希望に満ちたものになることを願っています。
(2022年3月31日時点)