シンガポールを襲った「チキンライスショック」
シンガポール駐在員事務所
大西 弘城
シンガポールには様々なローカル料理がありますが、その中でも代表的な料理と言われるのがチキンライスです。
国土の狭いシンガポールでは日本以上に食料自給率が低く、国内で消費する食品の約9割以上を輸入に依存しています。 鶏肉もそのほぼすべてを輸入に頼っており、シンガポール食品庁(SFA)によると、シンガポールにおける2021年の鶏肉輸入量は21万4,400トン。 国別ではブラジルが48%と約半分を占め、マレーシアが34%と2位となっています。 そんな中、マレーシア政府はロシアのウクライナ侵攻により鶏肉や飼料の価格が高騰したことを受け、国内の鶏肉価格を安定させるため、6月1日から鶏肉の輸出を禁止しました。
美味しいチキンライスを作るには、鮮度の良い鶏肉が欠かせません。冷凍ではないフレッシュチキンの約9割がマレーシア産です。 これまでは、距離の近いマレーシアから、生きたニワトリを輸入し、国内で処理した鶏肉をチキンライスに使用していましたが、これからは冷凍のブラジル産に頼らざるを得ません。 報道を耳にした国民の一部がスーパーで鶏肉の買いだめを行い、売場から鶏肉が姿を消しました。
さらに、マレーシアの輸出停止を翌日に控えた5月31日には、チキンライスを食べられなくなるのではと心配した地元の人々がチキンライス屋に殺到し、長蛇の列ができました。 幸いにも品質の良い冷凍肉が多く流通しており、現在もチキンライス屋は変わらず営業しているようですが、価格上昇は避けられず、多くのお店で10~20%程度の値上げを行っています。
現在ではマレーシア政府が鶏肉の輸出を一部解除したこともあり、落ち着きを取り戻しつつありますが、いまだ全面解除の目途は立っていません。 筆者もランチにチキンライスをよく食べることから、早く輸出が全面解除され、この先「第2次チキンライスショック」が勃発しないことを願うばかりです。