常夏のシンガポールで食べるローカルおでん
シンガポール駐在員事務所
大西 弘城
シンガポールには美味しいローカル料理がたくさんありますが、皆さんは「醸豆腐(ヨントーフ)」という食べ物をご存知でしょうか。 なかなか説明の難しい料理なのですが、簡単にいうと出汁で煮込まない「おでん」です。魚の練り物、豆腐、野菜、麺などの中から好きな具材を数種類選んで湯がいてもらい、 スープを入れて食べます。チリクラブやチキンライスなどの定番料理と比べて、あまりに地味すぎるため、旅行中の貴重な食事の機会にチョイスされる可能性は極めて低く、 残念ながら日本人にはほとんど認知されていません。筆者も駐在前にはその存在すら知りませんでしたが、今では一番好きなローカル料理は何かと問われると、 迷わず「醸豆腐(ヨントーフ)」と答えるほどのお気に入りです。
食欲をそそる多種多様な練り物
「醸豆腐(ヨントーフ)」は中国の客家によって伝えられた料理です。客家とは華北から広東・広西・江西・福建へ移住してきた漢民族の一派です。 名前にある通り、元々はひき肉を豆腐に詰めて味付けしたものでした。それがマレー半島を渡る間に魚の練り物に代わり、 豆腐のほかに野菜を入れるスタイルに変化していったようです。香辛料の効いたスパイシーな料理や油っこい食べ物が多いシンガポールにあって、あっさりした味付けで、見た目はまさに日本の「おでん」のようです。
【注文方法】
①器とトングを取ります
②練り物や野菜などの具材から好きなものを選びます
③麺とスープの種類を選びます
④店員が具材と麺を湯がいて、スープを入れてくれます
ポイントは具材の組み合わせを自由に選べる点です。具材のミニマムオーダー(6個が一般的)が決まっていますので、 その範囲内であればどの具材をいくつ選んでも値段は変わりません。たくさん楽しみたい場合は、具材の追加も可能です。 その日の気分によって、具材やボリュームを調整できるため、飽きることがありません。筆者の定番は、「野菜6+練り物2」の組み合わせです。 ショーケースには食欲をそそる多種多様な練り物が並べられていますが、ダイエットのために「練り物は2個まで」という厳しいルールを自らに課しています。 加えて、麺も入れません。店員から麺の種類を聞かれると、毅然とした態度で「ノーヌードル」と返答します。
調理前
調理後
日本ではスープ専門店などのヘルシーな外食チェーン店が増えていますが、今のところ「醸豆腐(ヨントーフ)」の専門店はないようです。 シンガポールにお越しの際には、ぜひ「醸豆腐(ヨントーフ)」をお試しください。 そして、いつの日か日本でも気軽に「醸豆腐(ヨントーフ)」が食べられる日が来ることを願っています。