「シングリッシュ」に感じる
D&I

HIROGIN GLOBAL
CONSULTING PTE.LTD.
上田 怜奈

 初めまして、本年3月より現地スタッフとして勤務しています上田と申します。シンガポールには昨年9月に家族で移住してきました。出身は広島県のお隣、山口県です。今回は「シングリッシュ」と言われる、シンガポールのローカルの間で話されている特徴的な英語についてレポートします。

スタンフォード・ラッフルズ上陸の地

スタンフォード・ラッフルズ上陸の地
(背後左のビルは弊行事務所が入居するOCBCセンター)

 シンガポールにおける英語の起源は、イギリス東インド会社のスタンフォード・ラッフルズがこの国に上陸した1819年に遡ります。それまではマレー系の民族が住む小さな漁村でしたが、イギリスの植民地となったシンガポールには中国やインド等から多くの移民が移り住みました。彼らのコミュニケーションは英語で行われましたが、それぞれの母国語であるマレー語、中国語、タミル語などが交じり合い、独自の進化を遂げました。このようにシングリッシュは多様な民族が共存する中で自然と形成されました。

 シングリッシュの特徴は「簡略化された文法」と「独特な発音やアクセント」です。英語にある程度自信のある方でも、日常生活においてコミュニケーションを取るには少しの慣れが必要になります。ここではいくつか代表的なフレーズをご紹介しましょう。

 まずは、「Can」(キャン)です。例えばお店などで、「Can I ~?(~することができますか?)」と聞いたときに、店員さんが「Yes, you can.(はい、できます)」の意味で使います。「Yes」や主語「you」が省略されるのがポイントです。ホーカーセンターで食事を注文する際、こちらが何を聞いても店員さんは、「キャン!キャン!!」と連呼されるので、状況を理解するまで少し時間がかかりました。

 二つ目は、「Car park」(カッパッ)です。シングリッシュでは日本語でいうところの長音が省略される傾向があります。文字通り駐車場の意味ですが、初めて聞くと「河童」に聞こえます。タクシーに乗って駐車場に到着したところ、運転手さんが突然、「河童!」というので、反射的に周囲を見回してしまいました。

様々な民族料理が提供されるホーカーセンター

様々な民族料理が提供されるホーカーセンター

 このようにシングリッシュはとても短くてシンプルです。英語を母国語としない民族同士でも、特徴を理解すれば容易にコミュニケーションが取れます。近年、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」という概念が注目されています。多様な人材が交わり、一体となることによって、組織力が向上するという考え方です。居住者の4割以上が外国籍の人々であり、多民族国家として世界中から人材を引き寄せるシンガポールの発展を支えたのは、D&Iの考えに基づくシングリッシュなのかもしれません。