シンガポールに吹き荒れる
赤ヘル旋風
HIROGIN GLOBAL
CONSULTING PTE.LTD.
大西 弘城
シンガポールでは、毎年8月9日のナショナルデー(建国記念日)に街中が祝賀ムード一色に包まれます。特に今年は建国60周年という記念すべき年であり、例年以上の盛り上がりを見せました。祝賀行事が開催されるスタジアムは、ナショナルカラーである赤色のTシャツや帽子を身に着けた人々で埋め尽くされ、まるでカープファンの聖地“マツダスタジアム”のように真っ赤に染まります。

真っ赤に染まるナショナルスタジアム
シンガポールではサッカーやバドミントンが盛んで、野球の人気はあまりありません。ましてや日本の地方球団である“広島東洋カープ”の存在を知っている国民はほとんどいないでしょう。そんな中、カープ大好き駐在員の筆者はこの光景を見て、「シンガポール人はきっとカープが好きに違いない」と、ひとり勝手な説を唱えていました。
実は、カープとシンガポールには意外な親和性があります。まず、カープのチームカラーとシンガポールのナショナルカラーは同じ赤色です。さらに「鯉(Carp)の滝登り」は中華圏で“立身出世”の象徴として縁起が良いとされています。国民の7割強が中華系であるシンガポールにおいて、カープが受け入れられる素地は十分にあると言えるでしょう。
この夏、シンガポール中心部の「MUJIプラザシンガプーラ」にて、広島東洋カープの期間限定公式ポップアップストアがオープンしました。オープニングイベントには、現地在住の日本人はもちろん、多くのシンガポール人も来場し、大盛況となりました。会場では公式グッズのほか、カープ坊やとマーライオンのコラボTシャツや建国60周年を記念したユニフォームなどの限定品が販売され、レジには商品を買い求める人々の長蛇の列ができました。

ポップアップストア外観

オープニングイベントの様子①

オープニングイベントの様子②

シンガポール建国60周年記念ユニフォーム

カープ坊や×マーライオンコラボTシャツ(赤)

カープ坊や×マーライオンコラボTシャツ(白)
こうして筆者の説は立証されたわけですが、ひとつ想定外の出来事がありました。野球人気のないシンガポールにも、すでに複数のカープファンが存在していたのです。ポップアップストアの噂を聞きつけたシンガポール人のカープファンが、お気に入りのユニフォームを着て来場してくれました。彼らは広島に住んでいた経験があり、その間にすっかりカープファンになったそうです。広島発の赤ヘル旋風は、国境を越えてシンガポールという新たな地で確かな広がりを見せ始めています。

シンガポール人のカープファン①

シンガポール人のカープファン②