観光課題解決のヒントは
広島・瀬戸内にあり
HIROGIN GLOBAL
CONSULTING PTE.LTD.
大西 弘城
近年、日本の観光地では、特定エリアへ観光客が集中するオーバーツーリズムが深刻化しています。東京や京都などの都市部・有名観光地では、混雑による住民生活への影響や、観光満足度の低下が課題として指摘されています。
一方で、地方部では観光客が十分に滞在せず、消費が広がらないという需要の偏在が問題となっています。
広島においても、原爆ドームや宮島といった世界的に認知された観光資源を有している一方で、通過点として素通りされやすく、
滞在日数が短い傾向があります。主要スポットを訪れた後、他地域へ移動してしまい、県内での宿泊や体験消費につながりにくい状況が続いています。

宮島観光
この課題を解決する上で、注目すべき市場がシンガポールです。シンガポールでは、年に複数回、日本を訪れるリピーター層が一定規模で存在しています。 これらの旅行者は、いわゆるゴールデンルートをすでに経験しており、混雑した観光地を避け、地方部での体験型・滞在型観光を求める傾向が強まっています。
2024年に観光庁が発表した調査によると、シンガポール人訪日観光客の平均滞在日数は8.4泊、1人あたりの旅行支出額は約291千円と、いずれもアジア圏でトップクラスです。 さらに英語が通じて、日本の文化やマナーに理解がある点も、地方にとって受け入れやすい観光客となり得る理由の一つです。

しまなみ海道巡り
こうしたシンガポール市場の特徴を踏まえ、弊社では旅行会社と連携し、今年10月にシンガポール人向けの広島・しまなみサイクリングツアーを企画・催行しました。広島空港を起点に、世界遺産「厳島神社」のある宮島、 江戸時代からの町並みが残る竹原、坂の街として知られる尾道を訪問したほか、「サイクリストの聖地」として世界的に有名なしまなみ海道を巡りました。旅行ルートやレストランの選定は、地元をよく知る広島銀行の支店の行員と相談しながら進めました。

広島空港集合

竹原「街並み保存地区」

尾道「千光寺」
参加者のお目当てはサイクリングです。今回のコースは、貸切バスで移動しながら、来島海峡大橋と多々羅大橋の二大スポットをレンタサイクルで渡るお手軽なプランです。 参加者のレベルは、久しぶりに自転車に乗る初心者から、愛用の折り畳み自転車を持参するサイクリストまで様々でした。最初はふらつきながら自転車を漕いでいた女性2人組も、しばらくすると潮風を受けながら颯爽と橋の上を走り抜けていきます。 途中、道の駅での海鮮BBQや来島海峡クルーズを挟み、参加者全員が無事に完走しました。

来島海峡大橋

多々羅大橋

道の駅での海鮮BBQ
今回のツアーでは、サイクリング以外にも、宮島しゃもじ手づくり体験や神楽鑑賞、お好み焼き体験など、広島の文化に数多く触れていただきました。 終了後のアンケートでは、「一生忘れられない素晴らしい体験になった」「家族や友人にも広島・瀬戸内を勧めたい」「次回は桜の季節に訪れたい」といった嬉しい声を多数いただきました。

宮島しゃもじ手作り体験

神楽鑑賞

お好み焼き体験
こうした反応からも、滞在型・体験型の旅が、広島・瀬戸内の魅力を深く伝え、再訪や口コミにつながる可能性がうかがえます。広島・瀬戸内を舞台にした体験型観光は、オーバーツーリズムの緩和と広島の観光課題解決に向けた 一つのヒントになるかもしれません。